クロシジミ 2009年~2019年

兵庫生物学会に依頼されて、書いた原稿を載せておきます。
準備した多くの画像を掲載しておきます。

  前翅長16~23mm。翅表は♂暗紫色、♀黒褐色で、裏面は褐色味を帯びる灰白色で、前後翅ともに黒色斑がある。平地から山地の疎林に生息し、若齢幼虫はアブラムシ類の分泌物を舐め、2齢以降はクロオオアリから給餌を受ける。年1化性で、成虫は6月~8月に出現する。
 県内全域(29市町)に広く分布していたが、1980年代に急速に個体数が減少し、1990年代には南部で殆ど見られなくなり、2000年代には北部でも著しく減少した。クロオオアリのすむ明るい林間や林縁、草原などの生息環境が減少したためである。
 私の観察地、豊岡市日高町のポイントでは、20010年頃は多くの個体が確認できた。メスはシーズンに現地に行くと、遊歩道周辺で簡単に撮影出来た。オスは個体数が少なく、俊敏で撮影機会は少なかった。2019年8月を最後に確認出来なくなり、オスの開翅シーンをきちんと撮影するというか課題をクリアする前に絶滅してしまった。
 この地で行われていた山焼きが2020年を最後に行われなくなったことと、シカによる植物の食害により環境が大きく変化した影響と考えられる。また、各地でクロシジミが希少になり、採集者が集中したことも絶滅の大きな要因であろう。
 近年、採集をやめて撮影に転向する方も多くなった。撮影は採集より難しいが、収集対象が標本から画像データに代わるのは大変望ましいことである。
 2025年から地元のご努力により山焼きが復活した。環境が以前のようになり、クロオオアリが増加し、クロシジミが復活することを期待したい。

兵庫県版レッドリスト2022(昆虫類):Aランク
環境省レッドリスト2020:絶滅危惧ⅠB類(EN)

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